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里山の人々 - 望月将悟(もちづき しょうご)さんPeople of woodlands

てしゃまんくに憧れて

 井川の伝説上の英雄『てしゃまんく』を知っていますか?諸説ありますが、『てしゃまんく』は井川で生まれ、幼少時には井川の自然の中で動物と遊び、頭も賢く、誰にでも親切な青年に成長しました。重い荷物を背負って、1日で井川と駿府(現在の静岡市街地付近)を往復したと言われ、彼の墓といわれる墓銘には、『三十人力 手者万九(てしゃまんく)居士』と彫られており、体力的に優れた人だったことが推察されます。井川の昔話には、『てしゃまんく』にまつわる話もたくさん残っており、井川の伝説的な人物として語り継がれています。この『てしゃまんく』に匹敵する人物が、今回紹介する望月将悟さんです。

 井川小河内地区出身の望月さんは、国体の山岳競技静岡代表を契機に数々のトレイルレースに参加し、数多くの優勝を経験してきました。2年に1度開催される、富山県から静岡県までの山岳地帯を縦断する、日本屈指の過酷なレース『トランスジャパンアルプスレース(TJAR)』では、2010年から2016年大会まで4連覇を達成。この他にも2015年の東京マラソンでは、40ポンド(18kg)を背負って3時間6分16秒という驚異のタイムで完走し、ギネス記録も保有しています。現在は、静岡市消防局に勤務し、山岳救助隊員として活躍しています。望月さんの人並はずれた体力やその人気は、まさに現代の『てしゃまんく』と言えるのではないでしょうか。

過酷なレースにも自分のスタイルを貫く

 TJARのスタート地点は、日本海側の富山県早月川河口。数日間、寝食もそこそこにひたすら大自然の中を太平洋側の静岡市大浜海岸まで走破していきます。終盤に南アルプスにさしかかり、そこを抜けると望月さんの故郷井川に到達。望月さんが慣れ親しんできた自然・人々の顔がそこにはあります。人々の励ましに加え、目にする自然から過去の楽しい記憶やレースに対する想いが、望月さんを奮い立たせ、これまでの4連覇という偉業を成し遂げる原動力となりました。

 望月さんは『毎年これが最後』と思いながらも、また新しい目標を見つけ、その度にTJARに参加してきたそうです。2018年の大会では『無補給こそ本来のレースの姿』という想いから、無補給完走に挑みました。目標達成すべく必要な水分・食料などを詰め込んだザックは過去最大の重量になりました。その重いザックを背負いながらレースに臨み、6日16時間7分で無補給完走を見事に達成しました。常に自分に厳しい目標を課し真摯に向き合う望月さんの姿勢が、TJAR無補給完走という超人的な目標を達成させました。

 『これからもレースに参加するのですか?』と質問したところ、『レースが近くなってきて、何かやり残した事があると感じたら参加しているでしょうね。』と爽やかな笑顔で話してくれました。

『自然の中へ 一歩踏み出そう!』

 これまでのキャリアを通じて、自然の偉大さ、優しさ、厳しさを熟知している望月さん。多くの人達に井川の自然を知ってもらい、もっと自然と触れ合う機会を増やして欲しいと考えています。この想いで、2018年に静岡市南アルプスユネスコエコパーク井川自然の家と連携して12kmのトレイルランニング(以後、トレラン)コースを監修しました。中級者向けではあるもののタイムトライアルが目的ではなく、初心者でも自分のペースで四季折々の自然を感じながら体験できる、望月さんの想いが詰まったコースになっています。

 老若男女問わず自然と触れ合い、自然との接し方を学習して欲しい。それが、『自然の中へ 一歩踏み出そう!』という望月さんの言葉にも繋がっていきます。

 望月さんとの会話の中で、『井川の自然体験をきっかけに、自然に関心を持ち、大切にし、自然の中へ踏み出してもらいたい。自分を育んでくれた井川の自然の良さを知ってもらいたい』という想いが、端々で感じられました。

 トレラン界では、『しずおかの熊』の呼び名をもつ望月さん。熊の表情はすっかり消え、爽やかで柔和な表情を浮かべながら井川に対する想いや自然と関わることの楽しさを語ってくれました。

 井川の自然の中で育まれた、現代の『てしゃまんく』は、先代と同じようにこれからも語り継がれるでしょう。

 取材が終わったあと、『ちょっとトレーニングに行ってきます!』と爽やかな笑顔を残し、起伏の激しい山中に颯爽と消えて行きました。

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