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里山の人々 - 長倉うた子(ながくら うたこ)さんPeople of woodlands

家に居るより
畑で這いつくばっていた方が楽なのよ

 毎月10日に龍泉院(りゅうせんいん)という井川のお寺の清掃活動を行っている長倉うた子さん。「自分の家が汚くたって気にしないけど、井川のお寺が荒寺なんていわれたら嫌でしょ?だから有志のみんなで協力してお掃除しているの」と長倉さんは言います。実は長倉さん、井川の小学生に聞いたアンケートで「井川の立派な人」に選ばれた経験の持ち主。しかも、それをおくびにも出さない謙虚さを兼ね備えています。

 「井川の人たちは、食料をはじめ生活用具や農具なども極力自分の力で作ってきた。井川には、コンビニエンスストアやホームセンターなんて無いからね。たとえば、こんなものも自分たちで作るのよ」といって長倉さんが見せてくれたのは、ビクと呼ばれる農作業で使用する腰かご。荷物の梱包などに使われるPPバンド(ポリプロピレンバンド)を器用に編み上げて立派なかごに仕立てています。

 「私がまだ若かりし30代の頃の話だよ(笑)。アケビのつるを使った、ゆとりづくり(洗った芋などを入れるかご)を教えてもらえないかという話が入った。子どもの頃の手習いが役立ち、茶工場を会場に大勢の人が集まったよ。」と長倉さん。昭和40年代前半(井川に朝市会が誕生したころ)、まだ交通の便も良くない時代、かごを街から仕入れるには、時間とお金がかかったからでしょう。集まった人たちは、長倉さんの技術と手先の器用さに着目したのです。以来、井川ではアケビでかごを作る方がたくさん増えたといいます。

 長倉さんのお仕事を聞くと「若い頃は理髪店でも働いたけどね。私の仕事は農業です。家に居るより畑に這いつくばっている方が好き…というより楽。幼い頃から農業を営んでいた両親の仕事を見よう見まねで手伝ってきた」と言う長倉さん。すかさず横にいた友人の遠藤弘子さんが、「うた子さんのすごいところはね、見よう見まねだけではないということ。うた子さんは、[月刊 現代農業(農文協発行)]を今でも定期購読しているの。80歳を迎えようとしている人が、自分の農業を改善しようと努力する気持ちがすごいのよ」と付け加えてくださいました。

 「若い人たちに井川を愛してもらいたい…。井川を助けてほしい…。と願うだけでなく、ベテランやお年寄りも一緒になって支え合えばいい。年寄りだって工夫して、より良い井川を創っていかなくっちゃ!」という長倉さんと遠藤さん。

 井川のベテランウーマンパワーは、今も健在です。

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