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取材日は2023年7月後半です。
登山道や山小屋の状況などは、各自で最新情報をご確認の上お出かけください。
「ステップアップ南アルプス南部登山」
千枚岳(2,880m)から
悪沢岳
(荒川東岳・3141m)を目指す
丸山(3,302m)に登頂!
丸山に着く頃には、周囲はぐるりと霧模様だった。
晴れていれば、南アルプス南部のみならず、富士山や南アルプス北部の山々も望めたはず。眺望がないことは少し残念だが、3,000mを越えるピークを踏み、達成感もひとしお。
歩みを進め、悪沢岳へと向かう岩場から丸山方面を振り返る。一本の登山道が空へと続いていくようで、幻想的だ。
曲線的な丸山までの登りから一転、ここから悪沢岳山頂までは、ごつごつと大きな岩が転がる道となる。
霧が濃くなってきた。岩だらけの景色の中、私たちのほかに人の気配もせず、別世界へ迷い込んだようだ。
南アルプスは、赤石山脈とも呼ばれるが、その名の由来となった赤石=赤色チャートの大きな岩が、塊で現れる。赤石山脈の盟主・赤石岳の山頂付近よりも、ここ悪沢岳の方が赤色チャートがたくさんあるんだよ、なんて豆知識を教えてもらいながら、初めて間近でこんなに大きな赤色チャートを目にすることに興奮する。この赤色チャートとは、海の底で放散虫などの死骸が堆積したものに、酸化鉄が結びついたことによる岩だ。つまり、この場所がかつては海の中であったことを示すものだ。3,000mもあるこの山岳地帯が、海底から隆起したのだと想像すると、とても不思議な気持ちになった。
ごつごつの岩の上を歩いたり、浮石があったりと歩きづらい道ではあるが、様々な種類や色、形の岩が並ぶ、岩のミュージアムのような空間であった。
この場所では、岩陰から顔を出すホンドオコジョにも出会った。家族だろうか、数匹が岩の間を走り回り、私たちの方へ近寄ったり逃げたり、顔を出したりまた逃げたり、とすばしっこい動きを披露してくれた。とても愛らしい姿で「山の妖精」やら「山の神様の使い」などと呼ばれることもあるらしい。本当にかわいらしいのだが、肉食で、自分より大きな鳥やウサギなどを捕食することもあるそうだ。ライチョウのヒナにとっても天敵だ。
滅多に出会うことのできない彼らに出会うことができ、ラッキーだった。